君が為に日は昇る
この国の東方に、黒間という山が在る。その麓の小さな村で夜太は暮らしていた。

『一、盗賊村の捨鬼』

「さて祝いの酒だおめぇらぁ!存分に呑んで食って疲れを癒してくれ!」

「うぉぉぉぉ!!」

頭領と呼ばれる男は酒の入った小さな器を持ち高々と掲げ、一息に飲み干した。周りを囲んだ怖面の男衆もそれに続く。

黒間村。別名『盗賊村』
村中央にある広場では男衆の酒盛が始まっていた。
女衆はせわしなく酒や料理を運んでいる。

そんな中夜太は独り、人混みを避けるように広場の隅で水を呑んでいた。

彼に近づいて来る人間はこの村にはほとんどいない。『捨鬼』彼はそう呼ばれ皆から疎まれる存在であったからだ。

頭領「よぉ夜太。陰気くせぇ面してんじゃねぇよ。今回はおめぇの手柄なんだぜ。胸を張れ胸を!」

それでも夜太がこの村にいられるのはこの男の存在があってこそだった。
浅黒く筋肉質の体。袖を乱暴に切り取った着物。身の丈の大きな中年の男。

『黒間の頭領・源五郎』

大きな体を揺らしながら近づいてきた源五郎は夜太の頭をわしわしと乱暴に撫でる。
源五郎は夜太の親代わりだった。
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