君が為に日は昇る
夜太の剣はある意味では模倣のような物である。


源五郎、真田、上条。剣豪はこれだけに留まらず。


幾多の戦いの中で幾多の剣豪と出会い、打ち合い、そして斬り臥せてきた。


そうして彼が幼少から積み重ねたのは誰にも劣らぬ。


命のやり取り。


元服にも到らない幼子が乗り越えた幾多の剣豪の姿は彼に重なり。


そしてそれを天賜の才がより強き物へ。


生涯の全てがその剣に宿っていた。


━こんなことがっ…!


━馬鹿なっ…!


━俺が圧倒されるなど…。


胸に刻まれた十文字の傷。赤にまみれた狼の眼から消え行く光。


更に挙げるならば精神的要因。


守る為に戦う者と戦う為に守る者。その大きな差。


後者に当たる陸野に、もう余裕など存在はしなかった。


「まだ…!」


しかし彼もまた幾多の剣豪を斬り臥せその屍の上に立つ幕府方最高峰の剣士。


どれだけの手傷を負おうと退くことはない。例え四肢を失っても戦い続けるであろう。


その命を散らすまでは。


そうしてある人は言った。


手負いの獣ほど恐ろしいと。


「これからだ餓鬼ぃっ!!」


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