君が為に日は昇る
ぶつけろ、力を。


繰り出せ、技を。


感じろ、痛みを。


絞り出せ、声を。


賭けろ。命を。


刀は鞘へ。放つは抜刀。姿勢は低く。地を這う如く。

そうして夜太は駆けた。稲妻が如く。否、それよりも疾く。


迎え撃つ血まみれの狼。構えは変わらず大上段。地を這う小虫を噛み潰さんと待ち構える。


━血迷ったか!突撃に転じるなど!


身体、微動だにせず。ただ心は生にしがみつく。


「笑止っ!」


距離が縮まる。決着迫る。血で血を洗う戦いに今、終止符が打たれようとしている。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


狼の遠吠え。振り下ろす。破壊の牙。
剣速、体勢、機会、全てにおいて申し分ない。


━殺った!!


確信した。直線上に突撃してきた夜太を大上段で叩き潰す。感触あり。


舞い上がる土煙が、砕け散る大地が、その威力を明確に物語る。


「俺の…!勝ちだ…!」


口角を吊り上げ狂った笑みを見せる。


晴れていく土煙。そこに転がるのは両断された





蒼い鞘。


━お前の。


「源五郎っ…!」


< 206 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop