君が為に日は昇る
ここで夜太を行かせたら、彼は間違いなく死ぬだろう。それが彼女を突き動かしていた。


「お願い夜太。私達と一緒に逃げて。」


━どけ。


「さっきの銃声。きっと父上達は死んだのね?」


━どいてくれ。


「今行ってもきっと無駄死にになるわ。」


━頼むから。


夜太は息を荒くさせ、首を横に振る。お雪を押し退け彼は山道を戻るべく走りだす。


「私たちはこうなっても仕方ないことをしていたの!沢山の人を殺してきたの!」


お雪の叫び声は夜太の体を硬直させた。彼はゆっくりと後ろを振り向く。


「それでも、それでも父上達は。私達だけでも生かそうとしてくれた。それを貴方は無駄にしようとしているの…」


━お雪が、泣いている。


涙。それが夜太の心に理性を呼び戻した。
お雪は顔を歪ませ、唇を噛み締めながら必死に、必死に言葉を紡ぐ。


「私を一人にしないでよぅ…夜太ぁ…」


全てをわかった上で生きようと。そう夜太に説き、お雪は目を伏せ泣き崩れた。


僅か十歳の娘が、夜太の心の鬼を掻き消したのだ。


「あんた。お雪ちゃんを頭領に頼まれたんだろ?頭領の思いを裏切る気かい?」
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