君が為に日は昇る
戦はもう大分前に、終わった。連合の勝利に国中が歓喜したのを覚えてる。


真田さんから生死がわからないと聞かされたことも。


手紙を何度も何度も読み返しても、貴方は戻ってこない。


結局、私に日は昇ることはなかったんだ。





何となく、黒間の村に行ってみることにした。家は焼き払われて何も残っていなかったが。


お稲婆以外の家族を失った私には思い出にしがみつくしか手段が残っていなかった。


「父上。皆。ただいま…。」


おかえり。誰かに言って欲しい。そんな思い。


だが届くはずもなく、私は持ってきた花をそこに供えると、帰路に歩き出す。


「おかえり。」


不意に聞こえた。


その声は懐かしい。優しい。力強い。確かに。


貴方の声。


「随分待たせた。後、ただいま。」


手紙の最後にはこうあった。





『君が為に日は昇る』






今、私を眩いまでの光が照らしてくれた。





『七、手紙』
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