君が為に日は昇る
季節は変わり、秋。


夜太とお雪は迫る冬に備える為、『紅葉の森』にある保存できる木の実などを集めていた。


お稲婆といえば、家で干し肉作りに精を出し冬籠りの準備は着々と進んでいた。


━寒くなってきたな。


冷たく乾燥した風が夜太の頬を撫でる。まもなく冬を到来を告げるような。そんな、風。


━ん?


何かおかしい。彼は風の中に違和感を見つける。


━これは…。


感覚を研ぎ澄ませる。風からは酷く懐かしい匂いがした。


「夜太ぁ?どうしたの?木の実集まった…きゃぁっ!?」


匂いの正体。それを見つけた瞬間、彼はお雪の手をとり走り出していた。


「痛い!痛いよっ!どうしたの!?夜太ってばぁ!」


突然のことに叫ぶお雪を強引に引っ張りながら彼は家を目指す。


━間違いない。あの匂い。あの匂いは…。


家に辿り着くと彼はやっとお雪の手を離し、落ち着かないまま中に入っていく。


お稲婆が驚いた様子で目を丸くしていたが説明する暇はない。

そして戸棚にしまってあった、青い鞘な刀を腰に差し込んだ。


「いいか!二人共絶対外に出るな!俺が戻るまで絶対だ!」
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