君が為に日は昇る
夜太はまだへその緒も取れぬ幼き時に、黒間の村近くの森に捨てられていた子である。

この時代国から課せられる重い年貢への苦しさから、仕事の出来ない老人や幼子を捨てるのは当たり前のこと。

夜太の境遇は決して珍しいものではなかった。

森の木の根本、必死に声をあげる夜太を拾い、育てたのが源五郎だ。

当時から黒間周辺では捨て子は縁起が悪いとされていた。

当然、源五郎が夜太を育てると決めた際も、村人の大多数は反対。しかしそれを押し切るように源五郎は夜太を育て始めた。


黒間の『盗賊村』。農業を営む傍ら、彼らには裏の顔があった。

商人や地主。金を持つ輩の舘に押し入り、強奪を行う。

そこで得た金品が彼等の生活を支えていた。農業はあくまでも普通の村を装うためだ。

黒間の村に暮らすのは脛に傷を持つ人間。
『盗賊村』の由縁である。

そこで源五郎はその実行隊に入れるべく夜太を育てた。

「幼子から育てる兵は強くなる」

この持論を元に源五郎は夜太に教育を施した。
刀、槍、弓、格闘術など戦う為の術を全て叩きこんだ。

結果、夜太は見事に期待に答え、隊の急先鋒を務めるまでの成長を見せた。
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