君が為に日は昇る
二人の男が夜太に迫らんと足を踏み出した丁度その時だった。


「ちょっと待てよ。お前その刀…。」


突然声をあげた陸野に、二人の男の動きがピタリと止まった。
余程教育が行き届いているのが見受けられる。


「確か見覚えがあるな。」


彼は鋭い目を細め、刀をまじまじと眺める。


「ああ。餓鬼。お前黒間の生き残りか。」


━…な!なぜこの男が…!?


なぜこの男がそれを知っている。
彼の心臓が大きく脈動する。


「その驚いた顔、やっぱりか。刀の鞘に見覚えがあったんだよなぁ。それ、源五郎のだろ?」


激しく脈動する心臓とは逆に、彼の顔からは徐々に血の気が引いていく。


━…この男は全て知っている!…どうする!?逃げるか…!?


「ああ。だからどうって訳じゃない。俺はお前を捕まえる気もないし、上にこれを報告する気もない。」


と、一呼吸置いた陸野の吐き捨てるように呟いた言葉。


「ついでだ。教えてやる。あの村を消す命令を出したのはこの、俺だ。」


━…え?


それは夜太の心に眠るもの。


「もう少し使える奴かと思ったがな。あの、愚か者が。」


それを呼び起すには充分な言葉だった。
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