君が為に日は昇る
夜太の中で、何かが弾ける音がした。


━愚かだと。


━今、父を愚かだと。そう言ったのか。


━お前が父から俺を奪ったのか。


━お前が、お前が、お前がお前がお前が!


━殺す。


━殺してやる…!


心が、憎悪に飲み込まれていく。目から光が消え失せていく。


夜太は構えを崩し、両の腕をだらりとぶらさげながら立ち尽くしていた。


「おっと。すっかり邪魔をしたな。お前ら、続けていいぞ。」


陸野が再び部下達に目配せをすると、二人は刀を構え夜太に向き直る。


━この餓鬼が俺の玩具になれるかどうか。いい余興だなぁおい。


陸野は顔を隠しながら口元を大きく歪ませ、嬉しさを堪えた。


この男は心底、自分が楽しむことしか考えていない。


その為だけに今、夜太の心を揺さぶり部下をけしかけているのだ。


そして、その期待を裏切ることなく。


「おぉぉぉぉ!!」


男の一人が夜太に向かい、斬りかかっていき。


そして。


一撃の元に斬り捨てられた。


━見つけた。玩具だ。


陸野の体を痛みにも似た感覚が駆け巡っていく。
まるで初恋でもしたかのような、そんな感覚を彼は覚えていた。
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