君が為に日は昇る
━良い。

陸野は堪えきれなくなった笑いに口元を歪め、声を漏らした。


━最高だ。

歓喜のあまりか顔は紅潮し全身を震わせている。


既に部下が死んだことなど眼中に無いであろう彼は、自らに突き刺さる夜太の視線を愛おしくすら思っていた。


━まだ若く、発展途上の体。

━凄まじいまでに殺意を孕んだ瞳。

━基礎がしっかりとした技術。

━最高級の、玩具だ。


━早く。早く死合たい。

陸野はその時を今か今かと待ち構えていた。





━なぜ。

━なぜお前は笑っている。


対峙する夜太は憎悪という名の激情に溺れていた。


刀についた血を払い飛ばし、狙いを定める。


━ならば。

━その顔のまま。

━死ね。

遠くで、砲撃の音が聞こえた。それを合図とするかのように二人は、足を踏み出した。

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