君が為に日は昇る
先手を取ったのは夜太だった。


陸野に接近した彼はまず中段。丁度の心臓に向け両手での刺突を放つ。


陸野は後ろに体を傾けそれを避けるが攻撃はそれだけでは終わらない。


一撃。二撃。三撃。
心臓に向けた中段への三段突き。


瞬時に刀の軌道を見極めた陸野は、後方に飛びそれを回避する。


続け様に刀が迫る。


後方に飛んだ陸野に夜太は一足で距離を詰める。


その勢いのまま背中まで振り被った刀を頭めがけて振り下ろす。


━一撃一撃が重いな。


陸野は滑るよう横に移動。刀を避けながら冷静に夜太を分析していた。





夜太は決して体格的に恵まれている訳ではない。


良く鍛えこまれた体ながらその実、線は細く身長も標準を僅かに超える程だ。


では何故彼の斬撃が重く感じるのか。


それは彼が常人よりも柔軟性に富んだ体の持ち主であるからに他ならない。


可動域の限界まで捻られた筋肉はより疾く、より鋭い斬撃を生み出す。


更に柔軟な体が放つ跳躍力は斬撃に体重を乗せ、強烈で重さのある一撃を生み出していた。


━紛れも無い才能。


夜太からの圧力をひしひしと感じながら、陸野は再び笑みを浮かべていた。
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