君が為に日は昇る
「やはり団子は餡子。これは譲れませんね。」

「あー。そうですか。」


優男は口一杯に団子を頬張る。対する男は興味無さげに茶を飲んでいた。


「あ、夜太君。食べないんですか?食べないならもらってもいいですかね?」


『華街』。陸野と対峙した秋から数ヶ月。今彼はこの街で暮らしていた。


「…どうぞ。」


優男は答えが返る前にすでに口に運んだ団子を咀嚼していた。呆れ顔でそれを見つめる夜太。


━本当に、あの時と同じ人物なのだろうか。





あの秋の冷たい風。そして血の臭い。死を覚悟した、あの時。


━俺は、再び命を拾ったのだ。


━この『真田虎春(さなだこはる)』という男の手によって。





『三、華街の片隅』





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