君が為に日は昇る
陸野は明らかに不機嫌な様子で刀を振るい真田を威嚇する。


気に食わないのだ。自らの『遊び』を邪魔されたことが。


勿論、原因はそれだけではない。


「反幕府勢力の中核が。よくも幕狼である俺の前に顔を出したなぁ。」


真田は相変わらず困ったような笑みを浮かべながら陸野に銃を向けている。


━反幕府!ならば少なくとも敵ではないか…。


夜太はその言葉を聞き一考した。


━陸野が真田に気をとられている今なら、逃げられる…!


僅かに体を揺らした瞬間だった。


目の前を白刃が通り抜けていったのは。


「おいおい…。そう易々と、逃がすかよ?」


━この男…!見えていないはず…!


陸野は夜太に顔を向けることはしていない。
反応したのは気配。


逃げられるなど、とんでもない考えだった。


「真田ぁ。こんな時じゃなけりゃ歓迎してやったのによ。ならお前から斬ってやる。抜きな。」


陸野が一歩足を踏み出す。


「それともその銃で撃ってみるか?弾の入ってない銃でよ。」


そしてまた一歩。


「抜け!真田ぁっ!」


再度、轟音。


空気が震え、鳥が木々から飛び立っていった。
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