君が為に日は昇る
「夜太君。私と、共に来ませんか?」

「何を…?」

━何を唐突に言い出したのだこの男は。

漂々とした態度はがらりと雰囲気を変え、真剣な眼差しで真田は話し出す。


「貴方はもうここにはいれない。私の所で面倒を見ましょう。」

「反幕府勢力に加われと…?」

「違います。」


だが合点が行かない。何故真田が黒間の、そして夜太の事を知っているのか。


それは真田が続けた言葉で明らかになる。


「私は、源五郎と旧知の中でね。貴方のことはよく彼に聞かされていました。」


源五郎。再び父の名を聞かされた夜太の頭に、あの場面がよぎる。


撃ち抜かれた、父の姿。


「お雪ちゃんも一緒にいるのでしょう?お稲さんも。」


真田は紅葉の森に目を向ける。


「彼は自分にもしものことがあったらと、私に言いました。」


『家族を頼む』


「その約束を果たす為に私はここを訪れた。たまたま戦火に巻き込まれましたがね。」


視界が滲む。夜太にもう警戒心はなかった。


「私は、貴方達を助けたいんです。」


悔しい。自分が家族を守れないことが。
嬉しい。死して尚、身を案じる父の心が。
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