君が為に日は昇る
実年齢を知ったこともそうだが、とある幾つかの要因から夜太は真田を先生と仰いだ。


この真田という男。とんだ食わせ者であった。


優男の外見とは裏腹にその剣の実力たるや只者ではなく。


聞けばとある流派の師範代を勤める程の腕だとか。


実際夜太も何度か稽古として対峙する機会があったものの、その度に苦渋を舐めさせられていた。


もう一つが彼の思想である。


反幕府勢力に中核として身を置く彼は、決して好戦的ではない。


むしろ戦わずして変化を得られるのであればそれでいいと。


反幕府勢力の中において異色の思想を持っていた。


「今の幕府が自分勝手な政治をやめ、民草の共にこの国の為に尽くすならば戦わずともいいのですよ。」

「血を流すことには何の価値もない。戦わずとも変わる道はあるはずです。」

「変わらねばこの国に、未来はない。」


常々こう説いている真田に夜太は生まれて初めての衝撃を覚えた。


そうして住む場所を与えてもらった恩返しと、真田から何かを学びたい夜太は、真田の護衛役として働くこととなったのだ。
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