君が為に日は昇る
━しかしまぁ緊張感のない人だ。


目の前で団子を頬張る真田を見て、夜太は呆れ顔を見せた。


この街では様々な人間が暮らしている。


反幕府勢力の人間もいれば役人も。勿論一般の町人も。

━わかっているのだろうか?


真田は反幕府勢力の中核。名も顔も知られ、常に狙われる立場にいることを。


━ん?


夜太は足元に置いていた編笠を深く被り、辺りを見回す。


━見られている。


季節は春。桜は色付きその美しさを存分に披露している。


何度目だろうかこうして襲撃を受けるのは。


「さて。そろそろ行きましょう夜太君。ふぅ。お腹が重たいですね。」


真田が丸く膨らんだ腹を撫で下ろしながら椅子から腰をあげる。


団子ばかり十皿。彼は会計を済ませるとふらふらと歩き出す。


━まったく…。


毒気を抜かれる。
真田の奔放な行動はどこか憎めず、殺伐とした空気を掻き消していく。


よくも悪くもこれも真田の魅力なのだろう。


━さてと。


どうせいつもの手なんだろう。夜太は裏路地に向かう真田の後を付いていく。


━やはり尾けてくるか。


その後を、男が数人。殺気を放ち追い掛けてきていた。
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