君が為に日は昇る
たった二人の血の繋がらない家族。その為に、夜太は目の前のものを斬り倒していった。





「く、曲者だ!襲撃!襲撃ぃぃぃ!」

草木も眠る丑三時。
大きな屋敷。その屋敷を守る為の大きな門。


そこに一人の男が疾風の如く迫る。片手に携えた刀が月明かりを反射し男の顔を映し出す。夜太だ。


門の前には守衛が二人。既に槍を手に夜太を待ち構えている。


━壱。先手必勝。


守衛には夜太が消えたように見えたであろう。


地面に顔面が擦れるほど体勢を屈めた夜太。その両手に握りしめられた刀。


一瞬で守衛の片割れの懐に飛込んだ。


「ひ」


断末魔をあげる寸前、地面から振りあげられた刀が頭と胴体を斬り離す。


「貴様ぁぁァァァ!?」


息つく間は無い。すぐに槍の一撃がくる。


━弐。退かず進め。

「うぼぁ…!?」

冷静に槍の軌道を見極める。
その長い柄を脇に挟みこみ、同時に守衛の喉に刀を突き立てた。
引き抜いた刀から鮮血が返る。


━もっと。もっとだ。足りない。もっと…命のやり取りを!


この時の夜太は死合にこそ、人を斬ることにこそ自分の存在価値があると考えていた。


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