君が為に日は昇る
「待てやごらぁぁぁ!!」


裏路地に入ってから十分程経つだろうか。
二人はひたすらに走っていた。そう。脱兎の如く。


後ろからは数人の男が物凄い形相で追い掛けて来ている。


「はぁっはっは!捕まえてご覧なさーい!」


尻を手で叩きながら満面の笑みを浮かべる真田。
そのすぐ後ろを夜太が頭を抱えながらついていく。


━いつものことだが…!なんなんだこの人の体力はっ!


道の入り組んだ裏路地では想像以上に体力を消費する。


しかし彼はその悪路を楽々と駆け抜けていく。山慣れしている夜太でさえもついていくのがやっとだ。


「待てぇぇぇ!!」


汗だくの男達が迫る。追いつけば離され、離ればまた追いつく。先程からこの繰り返しなのだ。


「あっはっは!愉快愉快!鬼さんこっちらー!」


くるくる周りながら手を叩く真田。完全に遊んでいる。


━毎回毎回なんでこんなに楽しそうなんだ!追いつかれたら不味いのに!


実は夜太。真田から刀を携帯することを禁じられている。


腰に差しているのは竹光(模造刀)である。


真田など手ぶらで出歩く始末だ。
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