君が為に日は昇る
「さて。うまく撒けましたね。」

「はっ…!はっ…!」

町外れにある草原。
追手を置き去りにした二人はここで休憩をとっていた。


汗を拭いながら草むらに腰をおろす真田。
涼しい顔で息切れ一つしていない。


対して夜太。
大の字に寝転び疲れきった様子で苦しげに息を吸い込んでいる。


「若いのにだらしないですねぇ。ご飯ちゃんと食べてます?」

「そ…はぁ…!んな…!はぁ…!こと…!言った…て…!」


団子を山ほど食べた直後に数十分駆けた。
それでもこの差がでるのは真田がもののけの類だからだろう。


最近では夜太はこう考えるようになっていた。


「夜太君。私は色街に行く。君も来るかね?」

「…」

夜太は無言で首を横に振った。この上風俗とはこの男の体力は無尽蔵なのだろうか。


そうかそうかと高らかに笑うと、真田は日の沈み出した街へと歩いていった。


毎日夕方になると真田には別の護衛がつくと聞いている。


夜太は面識はないがさぞや大人物なのだろうと考えていた。


なにしろあの男と長年行動を共にしているというのだから。
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