君が為に日は昇る
頷く彼女。高まる、鼓動。


「けっ「こんばんわー!」


沈黙。突然掻き消された言葉に目を丸くする二人。


「いやーすっかり酔っ払ってしまいましたね。いやいや困った困った。」


この声は間違いなく真田だろう。玄関の方で大騒ぎしている。


「あれー?寝ちゃったんですかね?誰かいませんかー?」


何とも間の悪い男はろれつの回らない口調で戸をばんばんと叩いている。


二人息を潜め真田に見つからないようにしていた。
こんな所を見付かれば何を言われるかわかったものではない。


「うるっさい!」


「でっ!?」


戸が開いた音のすぐ後、お稲婆の怒声が聞こえてきた。


続けて聞こえた鈍い音からいて真田にお灸を据えているのだろう。


「可愛い孫がせっかく…!酔っ払いめ!出掛けるよ!ついてきな!」

「痛い!痛いですって!」


聞かれていたのか。二人は顔を紅潮させる。


玄関が静かになったところを見ると、本当にお稲婆は真田を外に連れ出したらしい。
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