君が為に日は昇る
「お雪。支えておやり。」


お稲婆は優しく微笑む。


「あの子を好いとるんだろう?」

「えっ!?」


突如、優しい笑みから悪戯な笑みに変わる彼女。
お雪は顔を真っ赤にして目を見開く。


「いやいやいや!何言ってるのおばあちゃん!そんなこと…!」


大袈裟な身振りで否定するお雪を見て、彼女は笑いを堪えるように口に手を当てた。


「あんたは本当にわかりやすいねぇ。」

「あっ!」


謀られた。それがわかりお雪は更に紅潮した頬に手を当てる。


それから観念したのか恥ずかしそうに彼女はお稲婆に口を開いた。


「小さい頃からね、一緒にいたから…。いないと不安というか。」

「いつも一人で飛び出して、無理してて、心配で…。」

「誰かの為に一生懸命で…。」

「無愛想だけど…。本当は誰よりも優しくて。」

「だっ、だけど好きとかじゃないの!本当弟みたいなそんな感じで!」


お稲婆は彼女の独白を、うんうんと頷きながら聞いていた。


「それが、好きって感情なんだよ。お雪。」


そして彼女を優しく諭したのだった。
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