君が為に日は昇る
時は少し遡る。


蝉の声響く夏。街にある道場で夜太は真田と対峙していた。


「…そうですか。」


蒸し暑い風が道場をすり抜けていく。


真田の鋭い眼光に射抜かれた夜太は沈黙を余儀なくされた。


「なるほど。答えは見つかったようですね?」


黙り頷く夜太。瞬間、真田が細い目を見開く。


「だがまず本当に祝言を挙げるとは何事かー!私だってまだ挙げてないのに!」


顔にはひっかき傷と青痣を作り、目にはうっすら涙を浮かべている。


どうやら昨晩、お稲婆にこっぴどく絞られたらしい。


「貴方は私が大変な目に合ってるというのにそんな中お雪ちゃんと本当に祝言を挙げるなんて何を考えているのか。ああ情けない情けない私を裏切るだなんてああそうか色街に付き合わないのもそういうことだったんですねそうですかそうですか。」


ぶつぶつと嫌味を吐き出す真田。


早朝稽古の為に道場を訪ねた夜太は、事のあらましを真田に話した。


お雪と本当の祝言を挙げるということ。剣を握る理由が見つかったこと。


それがまさかこんな事になるとは。


夜太はすっかり憔悴した様子でただただ立ち尽くすのであった。
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