君が為に日は昇る
瞬間、夜太の眼前に木刀の先端が突きつけられた。


「もしてめぇの実力が俺を納得させられなけりゃよ。護衛を降りてもらう。」


年齢は四十を越えているだろうに。男の動きは軽快そのものだった。


確認するかのように跳躍し床をしっかり踏みしめる。


「この国の情勢はこれから一層厳しくなる。中途半端な野郎ならいらねぇ。俺一人で充分だ。」


真田も納得済みのことなのだろう。既に道場の隅に腰を下ろし事の行く末を見守っている。


「俺の名は上条政次。」


『真田の護衛。上条政次(かみじょうまさつぐ)』


「全力で来い。もし気持ちの入ってねぇ打ち込みをするようなら…。」


そして上条の体は。


「殺す。」


凄まじい殺意を纏っていった。


━さて、見せてもらいますよ夜太君。

━貴方の決意、何が為に戦うのかを。


「その前に死なないといいですけどね。」


真田は一人、苦笑いを溢した。
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