君が為に日は昇る
床板に爪痕を残す脚力。


先を取るは上条。


空気を巻き込みながら突進。

地を踏みしめる。屈強な腕を、鍛え抜かれた身体を、限界まで振り絞る。


生み出されるは至高の威力。眼に映らぬ速度。


その一撃は例え受け止めたとしてもその木刀ごと夜太を粉砕するであろう。


明確に剣豪と言えるその力量。それは上条にとっては不運に近いものだったかもしれない。


この戦いにおいて彼の持つ力量は夜太の才能の開花をより促進させた。


夜太の構えはいつの間にか解かれていた。


ただ立ち尽くす夜太。


神経を研ぎ澄まし、眼を見開き、四肢を脱力させ、ひたすらにその一撃に集中した。


━つったってんじゃねぇぞ!気でも触れたか小僧!


立ち尽くす夜太に当然上条は躊躇しない。一撃を繰り出すことに全力を籠める。


躊躇すればやられるのは己なのだ。


そして上条は、その一撃を振り降ろした。






━こんな、こんな…。


全身が粟立ち、冷ややかな汗が頬を伝う。


真田は、いつの間にか立ち上がっていた。


もう座っていることなど、彼には出来なかった。
< 75 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop