君が為に日は昇る
「やるじゃねぇか小僧。いや夜太よぉ。」


「あっ…ありがとう…ございまし…。」


結果的に、倒れたのは夜太であった。仰向けに床に沈んでいる。


礼の言葉を言い切ることも出来ず、彼はそのまま気を失った。


「おい真田よぉ。」


上条の問掛けに真田は応えることが出来なかった。その眼は虚ろに宙を泳いでいる。


そんなことはお構い無しと上条は言葉を続けた。


「間違いない逸材だぜ。こいつぁよ。」


夜太が放った一撃は、深々と上条の脇腹に痕を残していた。


━間違いない。あれは、無拍子。


強く握った拳から血が流れる。それは夜太が放った一撃が、真田の想像を超えた証拠である。





豪剣がその身に触れる。


僅かながらに触れた木刀を身を捻り、直撃をそらす。試みは成功。


上条渾身の一撃を見事避けてみせた。


しかし流石の豪剣。胸には赤く太い痣がくっきりと刻まれる。


かすめた程度ながらその威力。あと僅かに前にいれば。それは解りきった事であろう。


そしてその一撃を避けた直後の事である。



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