君が為に日は昇る
「ぶはっ!どんだけ集中してたんだお前は!」

「くくく…!大したものですよ!お腹痛い…!」


上条に肩を叩かれ、夜太はなんだか気恥ずくなった。顔を真っ赤にしてうつ向く。


「いやいや。誉めてるんだぜ俺らは。なぁ?」

「そうですよ。それだけの集中力は中々出せませんから。」


一頻り笑われてから焦るようにではあるが彼にはなんとも嬉しい言葉である。


師と仰ぐ真田。稀にみる豪傑の上条。


そのどちらもが己にとってかけがえのない人物であると。


━俺は、こんな瞬間を待ち望んでいたのかもしれない。


彼にはそう思えて仕方がなかった。


愛する者。慕う者。護るべき者。


その全てが糧となり己を生かし、強くさせる。


━恵まれたものだ。


彼もまた笑った。照れや喜びを隠すかのように。


そうしなければ楽し過ぎたから。


涙が出てしまいそうだったから。


なんともしまらない真田の言葉が最後に残っていたが。


「あ。ちなみに政次が本当に使うのは二刀ですから。調子に乗っちゃあ駄目ですよ。」


━…さて。修行あるのみだ。


次の瞬間には必死の形相で木刀を振るう夜太の姿があった。
< 79 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop