君が為に日は昇る
「まぁ落ち着きなさい。そんなに焦ることはないですよ。」


とりあえず、と真田は夜太を再び元の位置に座らせる。


「さて。貴方が見つけた答え。聞かせてもらいましょうか。」


先程までの和やかな雰囲気を打ち消すように厳しい表情。


それは腕や才だけではないのだ。志なくば剣を捨てろ。そう言われているようにすら感じる。


暫しの沈黙。


その中で己の頭を整理した夜太、それを一言ずつ並べ出した。


「俺が誰が為に剣の振るうか。それは…。」

「己の為です。」


ただこれだけならば身勝手な男のように感じる。
真田は黙って続きに耳を傾けた。


「俺は今まで、誰かの為に剣を振るってきた。」

「言い換えれば、誰かに責任を押し付けながら剣を振るってきたのです。」

「罪を誰かに擦り付け。己の咎を認めず。」

「そうしていつも逃げながら生きてきた。」

「生まれた境遇に、育った環境に。」

「全てを押し付けてきました。」

「だからこそ、今度は己の為に剣を振るう。」

「この身で、この心で、全てを受け止める。」

「そうしなければ大切な物を、守れやしない。」


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