君が為に日は昇る
「先生はこの国を変えると、そう仰いました。」

「この国が変わることで未来が変わる。」

「俺もその未来を見てみたいんです。」

「そう思うから。」

「己の剣でそれを切り開いていきたいから。」

「俺は剣を捨てません。」

「己の為に剣を振るい、己の幸せを守りたいのです。」


全てを言い切った。息もつかず吐き出した言葉。果たして真田に届いただろうか。


彼が話している間。真田はじっと彼の眼を見つめていた。


実は、真田の言葉には大した意味はなかった。


問題は、迷いがあるかないか。


もし今後、夜太が己につき戦場に立つのであれば。その迷いは必ず死を招く。


実際、真田はその迷い故に死に至った人物を何人も見ている。


迷いがあるならばいっそ、剣を捨てた方が良い。


それが真田の考えだった。


しかしこれだけではまだ答えにならぬと、真田は揺さぶりをかけていく。


「そこへ向かうのに死と隣り合わせの過程があるとしても。ですか?」


もしこれで揺らぐような志ならば。


心を鬼にしようと、真田は誓っていた。
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