君が為に日は昇る
道場に再び流れ出した和やかな雰囲気。


それは偶然にも。


夜太の才能の開花を待っていたかのように。


戦火はその産声をあげたのだ。


「真田様ぁっ!大変ですっ!過激派の一団が、幕府に向け出兵しました!」


それは真田の配下によって伝えられた。


倒幕派には二種類ある。


真田のように武力だけではなく、話し合いや説得による解決を望む者。


それが穏健派。


逆に同盟を結んだ諸藩の中には武力による倒幕を目論む者が多い。


それがいわゆる過激派だ。


長い間、倒幕派は幕府の力を弱める為に隙を伺ってきた。


しかし、その弱気な姿勢に我慢しきれなくなったのが過激派。


以前からの不穏な動きには気づいていた。


「まさかこんなに早く行動を起こすとは。来週には彼に会いに行くつもりでしたが…。遅かったか。」


配下の報告に肩を落とす真田。上条は悔しそうに舌を打ち鳴らしている。


「先生。彼とは…?」


うつむく彼に夜太が尋ねる。真田と対角、過激派の中核にいる男。


それは。


『東雲栄馬(しののめえいま)』


「それが過激派の、いや倒幕派最大の武を持つ男の名です。」


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