君が為に日は昇る

『其の壱、天ヶ原の戦い』

「東雲栄馬は国を変えるべくして生まれた逸材。やや、気性に難はありますがね。」


「まさかこんなに早く動くとは…。相変わらず、読めない男です。」


東雲栄馬。


彼は南方の有力武家に生まれた。


幼い頃より武術や政治を徹底的に叩き込まれ、幼くしてその才能は開花。


元服する頃には武術においては敵無し。政治においても素晴らしい手腕を振るった。


民や臣下を思いやる心遣いに人望も非常に厚い。


家柄、才覚、人望。全てにおいて申し分ない彼にはただ一つだけ欠点がある。


愚かとも取れるような奇抜で突拍子もない行動が多いのだ。


勿論知識や理論に裏打ちされたことではあるが、どうしても周囲が反応しきれない。


恐らく今回の出兵も突然決めたことだったのだろう。


「ま、なるようになるでしょう。天ヶ原はあくまで前哨戦。負けるようなら、そこで我々は終わり。」


「我々は我々のやるべきことを考えましょう。」


真田は眼を閉じ、思考を巡らせた。


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