君が為に日は昇る
「この大砲の性能…。凄いですな!既存の物とは飛距離も威力も段違いだ!」


立派な髭をたくわえた中年の男。興奮した様子で黒煙のあがる平野を見渡している。


天ヶ原では遂に幕府軍、反幕府連合軍が激突していた。


圧倒的な兵数を誇る幕府は五万人を下らない兵をこの戦いに投入した。


対して人数に劣る連合軍は二万に満たない兵数。


変革の前哨戦とも言える戦いは幕府有利で進むかに見られていた。


しかし実際は。


最新鋭の兵器を駆使する連合軍。その勢いは留まることを知らず、数に任せる幕府軍を次々と蹴散らしていく。


「鉄砲隊!敵の進撃を許すな!狙いが甘いぞ!」


連合軍鉄砲隊。その後ろから髭をたくわえた男が声を張り上げる。


「いやはや、まだまだ訓練不足で申し訳ない。」


彼は申し訳なさそうに頭を下げる。


その隣。戦場に似合わぬ美貌を持つ、一見して女にも見える。


長く整った髪、白い肌。真紅に染められた着物を身に纏う男。


「そこのお前、鉄砲を貸してみろ。」


男は幕府軍の進撃を食い止める鉄砲隊の一人から銃を受け取る。


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