君が為に日は昇る
男は何気なく狙いを定める。と、その引金を躊躇なく押し込んだ。


そして、誰一人欠けることなく進撃してくる幕府軍。


「は、外れ…た…?」


髭の男は呆然とした。


轟音をたて銃は弾を吐き出した。吐き出された弾はその遥かに上を通過したように見える。


むしろ幕府軍は続けて轟音をたてた鉄砲隊により倒されていった。


「脇をしめろ。体を動かすな。そうすれば狙いは自然と定まるからな。」


美しい男は外れたことを恥じる様子もなく、鉄砲隊員に銃を投げ返す。


「頭を失えば崩すのは容易いさ。」


その時だった。


幕府軍から悲鳴が響いた。


「指令官が撃たれたぞ!指令官が死んだぁぁ!」


途端に浮足だつ幕府軍。進撃が止まる。


「ふ、伏兵だ!敵が潜んでやがった!伏兵が出たぞ!」


それを合図にしたように隠れ潜んでいた少数の兵が幕府軍の真横に現れた。

一斉にに脇腹になだれ込む。


指示系統を失った幕府軍。混乱の中次々と討ち取られていく。


━当たっていたのか…!この距離を…!


髭の男は冷たい汗を流した。


隣の男の顔を仰ぎ見る。


━…恐るべし。東雲栄馬…!


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