君が為に日は昇る
━東雲栄馬。数々の逸話を持つ男。


剣を持てば敵無し。二十人を同時に相手し全員を斬り伏せ。


政治においても真田殿と共に不仲な諸藩を結びつけ。


今回の戦いにおいても交流の少なかった異国から極めて機能の高い兵器を仕入れ。


自ら指令官を撃ち抜き、それを合図に伏兵を突撃させる奇作。


まるで化物…。


「どうなされた。大久保殿。」


東雲の声に髭の男、大久保誠ははっと我に変える。


東雲、真田と共に連合を支える彼は今回の戦いに反対であった。時期尚早と。


しかし結果は連合が押している。


まるで夢心地であった。


「い、いやしかしよかったのですかな?真田殿への知らせが遅かった。この戦に間に合わぬのでは?」


考えを見透かされているような気持になった大久保は話を変える。


大久保は真田が戦いに間に合わぬことをずっと気にかけていた。


東雲は戦況を眺めながら微笑む。


「奴には奴の仕事がある。真田なら俺の考えがわかるはずさ。」

「真田殿の仕事…。それは、一体?」


幕府との前哨戦。それをさしおいての仕事。余程重要な事なのだろうか。
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