君が為に日は昇る
「いないんだよ奴らが。」


東雲の視線を追い、大久保は戦場に目をやる。そしてあることに気付く。


「…幕狼か!」


幕狼隊。戦であれば彼らが出てきていないはずがない。それがここにいない。


それが指し示すのは。


「核を潰し援軍を断つつもりだろうな。」

「そうか!幕狼は、富水に…!」


大久保は息を呑んだ。連合軍は通常、総勢五万近い兵を保有している。


幕府軍が有する十万の兵力には及ばないが最新鋭の兵器を駆使すればその差は埋まる。


だがもし三万の援軍が来なければ。


三万は真田側。つまり穏健派の人間である。


出兵の指示を出す真田さえ討ち取ってしまえば後はどうにでもなる。


「ならばなおさらなぜ真田殿を!」


大久保は憤慨した。最初から真田を連れてきていれば潰されることもないのだ。


「真田には、逆に幕狼を潰してもらいたい。」


大久保を無視するかのように東雲は話を続ける。


「あれは脅威だ。人数は少ないが戦に絡めば恐ろしい力になる。」

「最新鋭の兵器より、恐ろしいのは人間だからな。」


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