君が為に日は昇る
「真田殿を…餌にしたと?」


額に青い筋が浮かべ詰め寄る大久保。


「そうだよ。」

「っ!」


怒声をあげようとした大久保の口に彼はそっと手をあてた。


「兵が動揺する。」


あっさりとした口調。冷静に、淡々とした態度を東雲は崩さない。


「もし真田が死ねば援軍は押さえ込まれるだろう。そうすれば我々も終わりさ。」

「…!!」

「もしこの戦いに勝ってもね。」


口を塞がれたまま大久保は気付いた。これは信頼なのだ。真田に寄せる絶大な信頼。


「ある意味じゃ奴にかかってる。」


彼は再び微笑むと大久保の口から手を離した。


「信頼されてるのですな。」


他人に自らの命運を託すまでに。


「ああ。」


彼は刀を抜き、ゆっくりと前に歩き出す。


「まずは我々の仕事を成功させなければな。この天ヶ原に勝ち援軍を待つ。」

「そこで、総力戦ですな。」

「そういうことだ。さすが大久保殿。」


二人は互いに顔を見合わせ歯を見せ笑う。


「さぁ皆の者!この戦必ず勝つぞ!気合いを入れろっ!」

『うぉぉぉぉぉ!!』








『其の壱、天ヶ原の戦い』




< 91 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop