君が為に日は昇る
この新海こそが幕狼隊の基盤である。


曲者揃いの人斬りをまとめるのは一筋縄でいくものではない。


特に陸野のような狂人地味た人間を押さえ込むのだ。並大抵のことではない。


それが出来るのは。


「明朝だ。明朝には富水に発つ。」


彼もまた。


「狙うは真田虎春とその従者だ。」


人並み外れた剣豪で。


「富水を地獄に叩き落としてやる。」


生粋の人斬りであることに他ならない。


陸野の額に小さな汗が浮かぶ。


━狙いは真田と従者?よく言うぜ。富水を地獄に叩き落とすつもりだろ新海。


富水は反幕府勢力の隠れ住む街。


盛んな商業や風俗業を束ねる有力商人が街への介入を良しとせず、幕府は今までこの街に目を瞑ってきた。


しかし昨今の情勢が、反幕府勢力をのさばらせていく訳に行かなくなった。


反幕府勢力もう一つの中核。真田虎春討ち取るべし。


遂に幕府は富水へ幕狼隊の投入を決定したのである。


━大賛成だぜ新海。富水に雨を降らせてやろう。


━真っ赤な雨をよ。


陸野は口元を押さえ、その歓喜に満ちた表情を隠した。


━待ってろよ真田。楽しい祭の始まりだぜ。


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