カラフル・バニー
「あの、お客様」

後ろで少し低い声がした。慌てて我に返る。

「先ほどのお客様のお代金7890円は
どうなされますか」


しばしの怒りの沈黙が続く。我になんか返らなければ良かった。


「お手数ですが領収書ください。小田早智子
宛で」

さっちゃんのことだからきっとメニューの
端から端まで頼んだんだろう。
なんでこんな物あたしが払わなきゃならんのだ。


「出来上がりました。領収書です」

「すみません。連れがご迷惑をかけて」

「とんでもありません。また来て下さいね」

爽やかな笑顔と密かに店の宣伝をしていたのとさっちゃんへの怒りが混ざり、疲れとなってあたしに圧力をかけた。


あたしは自分のふらつく足元をなんとか保ち
いつもの交差点を曲がる。いつもは影で
隠れてほとんど見えないコンビ二が
今日は、はっきりと見えた。


それと同時にあるものも見てしまった。







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