カラフル・バニー
何度か渚の所へ足を進めてみたものの、当然無理があった。人の渦に飲み込まれ、生き地獄でも、見ているかのようだった。

あたしは、諦めかけた気持ちと一緒に屋上へと向かう。


「はぁ」


ため息は、何の意味も持たずに出てくる。


「何、きめぇ顔倍増させたような、面してんだよ」


突然、あたしじゃない人の声が聞こえた。


「え?渚…なんでいるの。瞬間移動?」

「なワケねーだろ。偉人かよ」

「…もしかして、超人って言いたい?」

「黙れ。偉人も超人も一緒なんだよ。バーカ」


揚げ足を取られるようなことばかり言う渚。
でも、あの短時間でどうやって来たのだろうか?


「よく抜けられたね。あの、ものすごい人だかりから」

「1人になりたかったんだよ」

「ここに来ればあたしがいることぐらい、普通に分かるでしょ。それなのに来たの?」

「…うぜぇ野次馬より、マシだろ」


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