スリーズ・キーノート



「イチの事、好きなんだろ。」

その矢は、私を綺麗に貫いた。痛く寂しく、悲しい矢。

違うよ。

震える声で言っても何の意味もない。キューは全てを見抜いていたんだ……。
「解ってたよ。もう、やめようか……その方がいい。」
「違うよ!」
「何が違うんだ!イチが好きなくせに、俺と付き合って……俺を笑っていたんだろう?」
「違う!違うよ!!」
女の見苦しい姿。
私はこうなる事を予想していたのに、まだ大丈夫だと思っている。自分が傷付かないように、必死に弁明して泣く。これが女の見苦しい姿と言わなければ、何というのだろう。


「私はキューが好きだよ!!」


最低だ!
私は、私を貫いた矢を、倍にしてキューに投げた……。


その夜、私はキューと一緒のベッドに寝た。
すごく寒くて、虚しかった。
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