スリーズ・キーノート
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その日も僕は、いつも通り母さんに叩き起こされ、眠い目を擦りながら着替え、顔と歯を洗って朝食を食べた。
テレビからは、また誰かが殺されたとか、救いようがないニュースが流れている。後は、芸能人の誰かが離婚したとか、あんまり重要性がないトピックスだ。
それを右耳から左耳へと、流すように聞きながら朝食を食べ終える。牛乳を一気に飲み干し、テレビで時刻を確認してから鞄を持った。
もう走らなければ遅刻してしまう時間になっちゃってる。行ってきます!と玄関先で荒げれば、母さんのいつもの言葉が帰ってくる。
忘れ物ない?車には気を付けなさい、とか子供扱いの台詞が足されて。
靴紐をしっかり結んだ僕は、ドアを開いて駆け出す。まず階段までのコンクリートの道を走って、階段を一気に駆け降りて。いつも通りだ。


でもその日は、違った。
時々、階段では隣のおばさんと擦れ違ったりするけど、その日は……。
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