スリーズ・キーノート
何故その男が謝るのかは知らない。
母さんに何か悪い事をしたのだろうか?でも母さんが怒っているような感じでもない。

来る度謝るから、小さい頃に僕は母さんに、もう許してあげて、と言った。
母さんは笑って、
もう許してる
って言うんだ。






「ただいま!」
学校が終わり、(部活をサボって)いつも通り、僕は家のドアを開けた。手を使わずうまくスニーカーを脱ぐ時、視線を足元に下ろすと……見た事がない黒の革靴。
客かあ、と理解すると僕はいつもより静かに歩いて居間へ向かった。
僕が下手な事をして、恥をかくのは母さんなのだ。それぐらい解ってる。

居間に入ると、ソファに黒い存在があった。
ああ、どこかで……。
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