SAKURA



「とりあえず、こっち。」



先程の強い力とは打って変わって、私の手首をそっと掴むと、来た道を戻り出した。



無我夢中で走ってきたから、今どこにいたのかわからなかった。


目を擦りながらチラッと振り返ると、廊下にいくつかの人影が見える。

普通科の校舎まで来てしまったようだ。


前を行く宙良クンは、ゆっくり、でも焦って、廊下を歩いて行く。




今日の宙良クンは初めて見る姿ばかり。


怒って怒鳴られたし、さっきは凄く焦ってた。

今は、困った顔してるし。



色々な面を知っていけるのは嬉しい。

一方で、嘘を付かれていたことで遠く感じてしまう宙良クンとの関係。


宙良クンにとっては、私なんてどぉでもぃぃ距離の人なのかもしれない。



そんなことを考えていたら、また涙が溢れてきてしまった。





も、やだよ……






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