SAKURA
"触れてみたい"
そんな衝動にかられ、手を上げた。
頬を包むようにそっと触れると、驚いたように宙良クンの体が跳ねた。
「吉川?」
不安そうに開かれた目を見て、安心させるように小さく微笑んだ。
何も言葉が見つからない。
でも、これで十分通じたと思う。
脅えたように震えていた瞳が、ポッと色を取り戻した。
宙良クンも何も言葉を発せず、真っ直ぐに目を見てくる。
頬に置いた私の手に自分の手を重ねた。
普通だったら、こんな展開、心臓バクバクで耐えられないだろうに。
今はトクントクンと心地良い胸の音。
この瞬間が、いつまでも続いて欲しいと願う。
さっきまで冷たかった宙良クンの頬は、2つの手によりほんのり暖まってきた。
宙良クンが重なった私の手をキュッと握り、ソファーの上に手を落とした。
向かい合った2人を、繋いだ手が結んでいる。
綺麗な目。
その瞳の奥から、熱い想いが伝わってきそう。
私のこの気持ちも、どうにか通じたらぃぃのに。
*