SAKURA

空いた宙良ｸﾝの手が､ゆっくりと私に伸びてきた｡


実際はそんなにゆっくりじゃないのに､私にはスローモーションを見ているように思われる｡



その仕草も､その指先でさえも､美しくて見とれてしまうからなんだと思う｡





大きな掌は､私の顔を半分隠してしまいそう｡


私のあごを軽く固定すると､今度は綺麗な顔が近付いてきた｡



誰かから教わったわけじゃないのに､こぉいうものは本能的に出来てしまうようになっているんだろう｡


自然に目蓋が落ち､それと同時に唇に宙良ｸﾝを感じた｡




触れた瞬間…今までの落ち着きが嘘のように､心臓が動き始める｡



ほんの一部が軽く触れているだけなのに､宙良ｸﾝの熱い熱がひしひしと伝ってくる｡




嬉しくて､恥ずかしい｡



そんな感情に押し潰されそうになって､でも逃げたくはなくて､ただ､ギュッと目を瞑った｡


そして､助けを求めるように宙良ｸﾝの手を強く握った｡



宙良ｸﾝはそれに応えるかのように､顔にあった手を頭の後ろに回してくれる｡


その手に少しだけ落ち着きを取り戻すけど､信じられないほどの幸せな状況に､頭の中は真っ白だった｡







どれくらいかわからない時間が過ぎていった｡


宙良ｸﾝが唇を離したのを感じてそっと目を開くと､鼻が触れそうな位置に宙良ｸﾝの顔があり､私の体温はドクンドクンと上がっていった｡


そんな私とは違い､冷静さを取り戻した宙良ｸﾝは､親指で私の頭を優しく撫でてくれる｡




宙良ｸﾝにこんなにも幸せそうな顔をさせているのが自分だと思うと､胸がキュウッと締め付けられて､目が熱くなった｡




私､凄い幸せだ……




この想いを､どぉやって伝える？



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