SAKURA



階段を降りたが、廊下には姿が見当たらない。


だから、多分ここ。



『失礼します…』



やっぱりね。



『あのっ…

昨日はありがとう!』



昨日と同じ格好でソファーに座り、ノートに何か書き込んでいる。

今日は、英語みたい。



話しかけても返事はなくて、邪魔しないようにそっと隣に腰を下ろした。



保健室には、誰もいなくて、静かな時間が流れる。


保健の先生って、こんな留守しててぃぃのかなぁ?



「何か用?」

ノートから顔を上げずに、男の子が口を開いた。


『ないけど…

お礼、言いたくて。』



私がいたら、邪魔かな?



「別に。」

ぶっきらぼうな言い方だけど、拒否されていないことが嬉しい。




『ね、聞いてぃぃ?』


少し間が空いてから、答えが返ってくる。


「何?」

『名前!

昨日聞いてなかったでしょ?』


シャーペンを持つ手が止まり、僅かに上げた視線と目が合った。

しかし、何も答える気はないらしく、そのまま私を見ている。



何かまずいことでも?



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