SAKURA




「せんせぇー

頭痛い。」


静かな保健室に、ドアを乱暴に開ける音が響いた。



バッチリされたお化粧に、動く度に匂ってくるきつい香水の香り。

パンツが見えそうなくらい短いスカートからは、綺麗な足がのぞく。


上履きの色で、3年の先輩だとわかった。



「ね、先生いないの?」



圧倒的な存在感に、失礼なくらいジロジロとその女の人を見てしまっていた。


『あっ、はっはいッ!』



そんな私のおかしな仕草は気にとめず、隣に座る和也クンへと狙いを定めた。


「君ぃ?」


私に話しかけた時とは違い、猫なで声。

こんなに急変するものなのかと驚きながら、2人のやり取りを見守った。


「薬の場所、知らなぁい?

あたし、頭痛いの。」



ところが、何も聞こえないかのように勉強を続ける和也クン。


どぉやら、無視を通すようだ。

教科書を見たまま、全く動じていない。



「それか、ベットに案内して欲しいなぁ?」


ソファーの肘掛けに座った先輩の手が和也クンの頬を撫でるように触れ、体を押し付け始めた。



すごい…



「ね?

ぃぃでしょぉ?」



あからさまな誘い方とその刺激に、私の方がノックアウトされてしまいそうだ。


が、それに全く動じていない和也クンにも驚く。



下を見て無視し続ける和也クン、相手にされてないのに気にせず誘惑しようとする先輩。

2人とも、自分の世界を貫き通している。




「元気なら、ここには用ないでしょ。


他当たってくれる?

邪魔なんだけど。」



先に動いたのは、和也クンだった。



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