SAKURA
冷たい声。
さすがの先輩も、これには凍り付いたようだった。
一方の和也クンはと言うと、何もなかったかのようにまた教科書を読んでいる。
それにカッとなり、先輩の顔が真っ赤になっていくのが見てわかる。
「ふざけないでよ!」
先輩が机の上に置いてあった消しゴムを掴み、その手を大きく挙げた。
『いたッ!』
投げた消しゴムが机の上を跳ね、私の頬にぶつかったのだ。
「吉川ッ!
見せて!」
それまで何にも動じなかった和也クンが急に大きな声を出し、頬を抑えていた私の手を取って覗き込んできた。
『やっ、えっ?
だ、大丈夫だから!』
顎を強く掴まれ、無理矢理和也クンと向かい合わせられる。
ちっ、近いよ…
十数センチの距離に、目をつり上がらせる和也クンの顔。
「傷…はないみたいだね。
痛む?」
『平気…』
怒ってはいるものの、心配してくれているようで声は優しい。
その姿に、何とも言えない胸の高鳴りを感じた。
*