SAKURA
「もぉっ!
何なのよ!」
私たちの会話を静かに見ていた先輩は、唇を噛みしめ、ドアに向かって荒々しく歩き出した。
「待てよ。」
呼び止めた和也クンの声が、先ほどよりも冷たく響く。
「吉川に謝れ。」
『わ、私は平気だから!』
手を離してくれないから、後ろにいる先輩がどんな顔をしているかわからない。
でも、ここから見える和也クンの表情は、怒りしか読みとれない。
「っ!
悪かったわね!」
先輩の吐き捨てるように言った言葉の後、廊下を走る音が聞こえた。
「赤くなるかも。
これ貼っとくよ?」
さっきとは打って変わって優しい声。
突然の変わり方に、私の頭はついていかない。
*