SAKURA





「次!

美波、コート入って。」


『はい!』


試合を来週に控え、皆の意識は高まっている。

特に先輩たち。


私も負けてらんないんだから!


先輩からのボール出しを受け、コートを隅々まで走り回る。


「ラスト1球!」



これが綺麗に返れば、私の番は終わり。

ボールの軌道を予想して構えるが、運悪くネットイン。


でも、諦めたくない!



『あと…少しッ!』



何とか手を伸ばし、ボールを拾い返そうとするけど…



――ザァー
『いったぁーい!』


私の体は思いっきりスライディングしてしまった。



「豪快にいったわね…」


両膝どころか、左手の掌や右肘まで、うっすら血が滲んでいる。


保健の先生いたし、消毒してもらおう…


「少し、休憩してきなさい?」

静先輩が苦笑いをしながらタオルを持ってきてくれた。


こんな風に転ぶの、私ぐらいなんだよね。

いつものことだから、皆に呆れられてばかり。


コート横の水道で泥を落とし、昇降口から校内へ入った。


*
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