SAKURA



『和也クン…』


何て話しかけてぃぃかわからなくて、語尾が濁ってしまう。

後ろで皆が見てるんだって意識しちゃうから、下を向いて口をパクパクしたまま。



でも、"おめでとう"と一言言われると、そんなことも気にならなくなった。


『ありがと!

ね、ちゃんと見ててくれた?』



何も答えてくれなくても、少しだけ動いた表情でわかる。

"当たり前だろ"って。



言葉のないやり取りが、2人の距離を近付けている証みたいで、嬉しい。



『もう一試合、見てってくれるよね?』


今日は2試合だけ。

当然最後までいてくれると思ってたけど…


「ごめん、用事あるから。」



そぉだよね。


そんな暇じゃないよね。


彼女とデートとかかもしれないし…



『だ…よね!?

あ、今日は、ありがとね。』



何となく心がズキンってしたのは無視して、和也クンにさよならの挨拶をする。



またしばらく会えなくなるけど…

学校が始まるまでだもんね?


*
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